2014年12月21日日曜日

掲載商品12

美しいキモノ 2012年秋号掲載 「袋帯」 



「平家納経」と「蝶鳥下絵経」


本日の作品は袋帯です。タイトルは平清盛で有名な「平家納経文」となっています。

平家納経とは、平清盛が一族の繁栄を願い厳島神社に奉納した経典三十三巻のことです。

そして経文が記されている本書部分は和紙に独特な技法で染料や顔料で色付けしたり、文様を刷り込んだり、金・銀の箔加工などの装飾を施した「料紙」を使用しています。


この度の図柄は、その料紙に金泥を引いた上に蝶、鳥、折枝、草花などの下絵を金銀泥で散らした「蝶鳥下絵経」と呼ばれる図案から描かれていると思われます。


品格


表地は全て漆箔を使用しています。おそらく料紙のごとく金泥を引いているように見せるためでしょう。いぶし金の輝きです。

そして「蝶鳥下絵経」が見事に織り出されています。しかしこれだけの数だとかなりの重量になってしまいますが、裏から覗くと表地部分は薄い薄い生地を使用しています。

ですので芯を入れて仕立てをしても、重さが全く気にならないと思います。

いにしえを思わせる雅なデザインと漆箔、手織りからなる見事な職人技。

品格漂うこの素敵な作品は是非お手にふれて感動を味わって頂きたいと思っております。

掲載商品11

美しいキモノ 2011年冬号掲載 「小紋」 



ローケツ染


本日の作品はローケツ染の小紋着尺です。

個性的な配色と大胆な柄粋が大変魅力的な作品です。

堰出しのローケツ染で全体に染め分けされていますが、ちりめん地のつや消しの感じがとても柔らかい雰囲気で表され、花や蔓のダイナミックな柄自体も喧嘩せずに優しく包み込んでいるように感じられます。


贅沢な着方


帯合わせとしては黒地はもちろん、カラシ系、モスグリーン系といった濃い目も良いと思いますが、あえてアイボリー系などの薄めの帯にして、帯締めで濃い目に合わせるといった感じも良いかも知れませんね。

贅沢な着方の提案ですが、長羽織もお洒落な着方になると思います。羽裏は何にしよう?紐は?と考えただけでワクワクしちゃいますね!

色々な着方を想像出来る楽しい、素敵な着物です。着物を着る機会が増えるほどきっと出番が多い着物になると思いますよ!


掲載商品10

美しいキモノ 2011年秋号掲載
 「牛首紬 訪問着」 



改石牛首紬

本日の作品は牛首紬の訪問着です。

牛首紬の発祥地、石川県白峰村は明治の初めごろまで牛首村と呼ばれ、紬の名前はこの地名に由来します。

歴史は古く、1159年の平治の乱に敗れ、牛首村に逃れた源氏の一族が村人に織りの技術を伝えたのが始まりともいわれています。


特徴は、繭を熱湯で煮込んでいるところから直接手で糸を紡ぎ出す、という手法を採ることで、独特の風合いを醸し出しています。

現在、牛首紬は、証紙に記載されている西山産業の白山工房と、今回紹介の加藤機業場(加藤紬工場)の2社にて生産されています。加藤機業場の牛首紬は、社長の加藤改石氏の名から、改石牛首紬とも呼ばれています。

同じ牛首紬でも、白山工房と加藤機業とでは、肌触りと地風はかなり異なります。白山工房は比べるとツルッとしたさわやかな風合いで、加藤機業はさらに紬らしくふんわりし、玉繭による節も多めに感じます。


しなやかな風合いと柔らかな色合い

今回の牛首紬は訪問着になっていますので、柄付けは豪華なはずなのですが、
こっくりとした地色といい、コスモスの描きっぷりといい、うるさ過ぎず何とも上品な仕上がりになっています。

上前からすうっと胸にかけて、優しく柔らかく、流れるように描かれているところが何ともニクイですね。


着てきたことを褒められる


右の写真は裏地の八掛部分ですが、手を抜くことなく上品に描かれていますね。

玉繭本来の生地の艶がしっかりと織り込まれたことにより、綺麗な光沢として牛首紬をより一層上品にしてくれています。

これからのシーズン、お呼ばれごと等でお出かけの機会が増えるそのときの一枚としてご愛用いただけたら幸いです。


2012年5月1日火曜日

訪問着

栗山 吉三郎
           

和染紅型(わぞめびんがた)

本日の作品は紅型訪問着です。制作は京都 栗山工房です。

故人である初代 栗山吉三郎が琉球紅型に魅せられて研究・試作を繰り返し、京友禅に見られるはんなりとした色彩や琉球紅型に見られない熨斗目や茶屋辻柄などを取り入れた、栗山ワールドともいうべき独自の紅型染め「和染紅型」を昭和23年頃に発表したのが始まりです。

今回の作品は「霞に枝垂れ桜 笹 雪輪 流水 蛇籠に苫屋 葵 菖蒲文様 紅型訪問着」とえらい長いタイトルなのですが、それはそれだけの文様が描かれているということであり、そしてそれらのデザイン・配色は何ともきれいにやわらかくまとめられていますね。

最近の作品とは違い、かなり以前に制作されたこの作品は、上質のちりめん生地を使用しているのでつや消しのむっくりとした色合いが紅型の可愛らしさをより一層引き立ててくれています。

帯合わせが楽しい

右の写真は肩・袖の部分です。霞取りに枝垂れ桜が描かれています。桜や笹、雪輪があちこちに散りばめられているのが何とも楽しいですね。

これだけの多色使いですので、帯び合わせや小物も色々と楽しめると思いますよ。

紅型の大胆さと京風のはんなりとした配色が見事にマッチしたお洒落なお着物です。結婚式やパーティー等の華やかな席には存分に発揮できるでしょうね。




2011年9月29日木曜日

袋帯

                              袋 帯 
          

刺繍がしっかり・たっぷりと

本日の作品は刺繍の袋帯です。

黒箔の台に唐草と宝尽くしの刺繍がなんとも綺麗に施されていますね。刺繍自体もいろいろな縫い方をしているので、よくよく見てみると「へぇ~」とか「ほぉ~」の連続で楽しくなりますよ。

 
とくに唐草の部分はほどけにくくする為と、恐らく立体感をだす為に金駒の両側に黒糸で挟むように全て縫われているのが「おおぉ~!」と言いたくなりますね (雄たけびばかりですみません 笑)。



秋冬・新春に

右の写真は前腹の部分です。こちらもしっかり・たっぷり刺繍が施されています。
附下や訪問着などのフォーマルに合わせますので、帯締め・帯揚も華やかなものから渋めまで楽しみがいがありますね。

お召しになるお着物をワンランク上げてくれる素敵な袋帯です。

秋冬、新春等のお呼ばれごとに抜群に活躍してくれるでしょうね。

2011年9月19日月曜日

栃尾紬

                栃尾紬 (とちお つむぎ)
            

栃尾郷

本日の作品は栃尾紬です。
栃尾紬は、現在の新潟県長岡市の栃尾で生産されていることからこの名がつけられています。


栃尾地方には栃尾郷と呼ばれる古くからの織物の産地があり、農家の副業として、殆ど全域にわたって生産されていました。この栃尾織物が、歴史的にまた、社会的に意義をもつようになったのは、江戸中期に先染の縞織物が生産されてからであるといわれています。


この紬は製糸には出来ない玉繭(たままゆ)を真綿にして、それを紡いで織られたものですが、長年に渡って改良を繰り返した結果、糸織りを主としながら玉糸や節糸を用いるなどの工夫がこらされました。


一見すると、綿織物のように見えますが、絹特有の光沢があり、しぶく目立たないために、凝った趣向とすぐれた品質が評判となり、主として江戸の町人の伊達者間で賞用されたようです。(長岡市資料より)



秋の「ひとえ」にも

現在よく見られる栃尾紬は玉糸で織られたツルっとした生地ですが、今回紹介の作品は、最近ではあまり見られない、座繰りで織られた生紬のようにざっくりとしていますが、風合いはしなやかで張りもあるためにひとえでも十分対応できます。

地色と絣の配色がなかなか面白いですね。帯び合わせはやはり藍染め系がしっくりときやすいでしょうかね。


現在も生産数はわずからしく、(今回の作品はなお一層ですが)あまり見ることが少ない織物の一つになってきました。見た目のざっくり感とはちがうやさしい風合いの織物です。秋ひとえにもぴったりなお着物だと思います。

2011年9月18日日曜日

芭蕉布

           喜如嘉の芭蕉布 (きじょかのばしょうふ)  
          

糸芭蕉

本日の作品は喜如嘉の芭蕉布の八寸名古屋帯です。
制作は、平良敏子氏です。

昭和49年、重要無形文化財に認定された「喜如嘉の芭蕉布」は、沖縄本島北部の大宜味村喜如嘉の「喜如嘉の芭蕉布保存会」に於いて、人間国宝 平良敏子さん(平成12年認定)を中心に製作されいる織物です。

芭蕉布は文字通り、芭蕉の木から取った繊維で作る織物です。
芭蕉には3種類あり、深紅の花をつける「花芭蕉」、美味の「実芭蕉」、繊維の取れる「糸芭蕉」があります。

この糸芭蕉から作られる織物が古来沖縄の人々に親しまれてきた芭蕉布なのです。

着物1反分の糸を取るには約200本もの芭蕉の木が必要とされます。

良質の糸は良い畑からと言われるだけに、糸芭蕉の栽培は大変重要な最初の段階なのです。

肥料を入れたり、葉や芯を切り落とすといった作業を経て、刈り取った後は皮を剥ぎ、大鍋で煮込み、何工程もある手間のかかる作業を経てようやく糸が出来上がります。

織りよりも、その前準備のほうが当然ずっと長いのですが、平良さん曰く、「織りは全体の100分の1」だそうです。


そうして織り上がった芭蕉布は、そのひんやりとした肌ざわりと風通しの良さ、何とも言えない味わい深さを感じさせる素敵な衣として、長きに渡り愛されているのです。



八寸帯と九寸帯

現在よく見られる芭蕉布の帯は九寸名古屋帯が主流で、お太鼓に「麦の穂」や「ゼニダマー」といった琉球絣が織り込まれていますが、
今回の作品は芯がいらない、かがるだけの八寸帯ゆえ生地が厚めに織ってある為に絣ではなく花織が施されています。


厚めに織られているとは言え、見た目以上に柔らかい、しかししっかりと腰のある風合いは前準備にしっかりと費やした良質な糸が物語っているのでしょう。

良質な糸による最高な締め心地と何ともたまらない素敵な配色、前回の科布同様、通気性が良く、軽く、水濡れにも強く、素朴なとても味わい深い織物です。



この作品は最近制作されたものではありません。綺麗に丁寧にまとめられたものではない、勢いと荒々しさの中に個性と想いがキラリと光るそんなワクワクしてしまう作品です。

重要無形文化財に指定された織物であることが伊達ではないことが、見て触れて締めたときに感動として存分に味わえる帯でしょうね。