2009年9月25日金曜日

袋帯

袋帯


 
色鮮やかな配色と織の緻密さ


本日の作品は袋帯です。

タイトルは「乾山色絵菊文」となっていますので、五島美術館所有の「乾山色絵菊文向付」よりオマージュされたのではないかと思われます。


色鮮やかな配色と構図の大胆さ、白地であってもほとんど白場がありませんね。
花の輪郭の濃淡さや葉の色も何色か使い分けていて、とても注意深く丁寧に織られており、原画に対する敬意を感じ取れます。


右奥の写真は垂れにあたる部分です。お太鼓の菊はピンクですが、黄色の菊や花の裏側の茎の付け根部分など色々な菊を見ることができて楽しく可愛い帯です。

袿錦」(うちきにしき)

垂れ先の部分に「日本の絹」・「日本の繭」のマークと「袿錦」(うちきにしき)の文字が織り込まれています。


袿錦とは、この帯のメーカーが名づけた名称ですが、平安時代から公家の女性の装束に小袿(こうちき)という貴族女子が着る(掛とも呼ばれる)準正装の上着ものがあり、用途・格式は時代によって様々ですが、何れも小袿は上品な色をもち、素晴らしい有職文様が織り込まれてきたようです。


そこでこのような上品さを、袋帯の生地、或いは全体に表現出来ないものかと思い、名付けたそうです。

夏物ではありませんが、生地は非常に薄く、やわらかく、紗や羅のように透けています。
そこに正倉院文様や琳派文様を織り、質感の差からくる「織の楽しさ」を表現しています。
非常に薄い生地にシワを寄せずに文様を織り込む、大変難しい織りです。



緻密さ、大胆さ、軽さを兼ね備えた素敵な帯です。
どんな着物にあわせよう?小物は?とあれこれ考えたくなる楽しい帯ですね。

2009年9月17日木曜日

助左衛門

名古屋帯

 
草木染めのやさしい色合い

本日の作品は名古屋帯です。制作は山形県米沢市在住の馬下助左衛門氏です。
藍と柿渋で染めていますので、柿渋染めによるザックリ感はなんともいい風合いです。やや薄手で透けた感じに織っていますが基本的には夏物ではないので長期間締めることができます。
柄は団扇文様のような感じがしますね。
地色は柿渋の上から藍を重ねているので、なにか藍っぽくない良い雰囲気がでています。

馴染むよろこび

右の写真はお太鼓の感じにしてみましたが、これは九寸帯なので実際はもう少し幅が短くなり、帯芯を入れて仕立てます。
以前夏帯で触れたのですが、今回も白芯ではなく、やや紺系の色芯で仕立てると落着いた感じになりますので、お薦めしたいと思います。

締めなれていくうちに、やがて藍が枯れ、地色・風合いが馴染んだものになったときにはお金では買うことの出来ないもっともっと素敵な帯になっているでしょうね。

2009年9月10日木曜日

名古屋帯

                  名古屋帯


 
きっとチラ見される面白い帯


本日の作品はパッチワークの名古屋帯です。
帯地は野蚕糸系を使用したと思われるざっくりとした生地です。

斜めからのアップの写真の通り、きれいにパッチワークが施されていますね。 このきれいな仕事に耐えうるように生地の打ち込みもしっかりとしています。


この生地の地色に対して矢羽根の配色はややこってりとしていますが、古布のように見せるのであればこれぐらい強めのほうが個性を感じてかえって可愛らしく見えますね。

締めるたのしみ

右の写真はお腹の柄の部分です。お太鼓がこってりに対して前腹は物凄くあっさりと、しかもパッチワークではなく崩した七宝文様を刺繍で表しています。


このアンバランス感は人によって賛否かもしれませんし、また人によっては帯止めを使用するというのもあるでしょう。


どちらにしても結ぶ楽しみ・コーディネイトの楽しみを感じる可愛い帯ですね。
すれ違いざまに 「んっ?」 と振り返られるであろう楽しい作品です(笑)。