美しいキモノ 2012年秋号掲載 「袋帯」
「平家納経」と「蝶鳥下絵経」
本日の作品は袋帯です。タイトルは平清盛で有名な「平家納経文」となっています。
平家納経とは、平清盛が一族の繁栄を願い厳島神社に奉納した経典三十三巻のことです。
そして経文が記されている本書部分は和紙に独特な技法で染料や顔料で色付けしたり、文様を刷り込んだり、金・銀の箔加工などの装飾を施した「料紙」を使用しています。
この度の図柄は、その料紙に金泥を引いた上に蝶、鳥、折枝、草花などの下絵を金銀泥で散らした「蝶鳥下絵経」と呼ばれる図案から描かれていると思われます。
品格
表地は全て漆箔を使用しています。おそらく料紙のごとく金泥を引いているように見せるためでしょう。いぶし金の輝きです。
そして「蝶鳥下絵経」が見事に織り出されています。しかしこれだけの数だとかなりの重量になってしまいますが、裏から覗くと表地部分は薄い薄い生地を使用しています。
ですので芯を入れて仕立てをしても、重さが全く気にならないと思います。
いにしえを思わせる雅なデザインと漆箔、手織りからなる見事な職人技。
品格漂うこの素敵な作品は是非お手にふれて感動を味わって頂きたいと思っております。
美しいキモノ 2011年冬号掲載 「小紋」
ローケツ染
本日の作品はローケツ染の小紋着尺です。
個性的な配色と大胆な柄粋が大変魅力的な作品です。
堰出しのローケツ染で全体に染め分けされていますが、ちりめん地のつや消しの感じがとても柔らかい雰囲気で表され、花や蔓のダイナミックな柄自体も喧嘩せずに優しく包み込んでいるように感じられます。
贅沢な着方
帯合わせとしては黒地はもちろん、カラシ系、モスグリーン系といった濃い目も良いと思いますが、あえてアイボリー系などの薄めの帯にして、帯締めで濃い目に合わせるといった感じも良いかも知れませんね。
贅沢な着方の提案ですが、長羽織もお洒落な着方になると思います。羽裏は何にしよう?紐は?と考えただけでワクワクしちゃいますね!
色々な着方を想像出来る楽しい、素敵な着物です。着物を着る機会が増えるほどきっと出番が多い着物になると思いますよ!
美しいキモノ 2011年秋号掲載
「牛首紬 訪問着」
改石牛首紬
本日の作品は牛首紬の訪問着です。
牛首紬の発祥地、石川県白峰村は明治の初めごろまで牛首村と呼ばれ、紬の名前はこの地名に由来します。
歴史は古く、1159年の平治の乱に敗れ、牛首村に逃れた源氏の一族が村人に織りの技術を伝えたのが始まりともいわれています。
特徴は、繭を熱湯で煮込んでいるところから直接手で糸を紡ぎ出す、という手法を採ることで、独特の風合いを醸し出しています。
現在、牛首紬は、証紙に記載されている西山産業の白山工房と、今回紹介の加藤機業場(加藤紬工場)の2社にて生産されています。加藤機業場の牛首紬は、社長の加藤改石氏の名から、改石牛首紬とも呼ばれています。
同じ牛首紬でも、白山工房と加藤機業とでは、肌触りと地風はかなり異なります。白山工房は比べるとツルッとしたさわやかな風合いで、加藤機業はさらに紬らしくふんわりし、玉繭による節も多めに感じます。
しなやかな風合いと柔らかな色合い
今回の牛首紬は訪問着になっていますので、柄付けは豪華なはずなのですが、
こっくりとした地色といい、コスモスの描きっぷりといい、うるさ過ぎず何とも上品な仕上がりになっています。
上前からすうっと胸にかけて、優しく柔らかく、流れるように描かれているところが何ともニクイですね。
着てきたことを褒められる
右の写真は裏地の八掛部分ですが、手を抜くことなく上品に描かれていますね。
玉繭本来の生地の艶がしっかりと織り込まれたことにより、綺麗な光沢として牛首紬をより一層上品にしてくれています。
これからのシーズン、お呼ばれごと等でお出かけの機会が増えるそのときの一枚としてご愛用いただけたら幸いです。