越後上布から応用された塩沢お召
本日の作品は本塩沢です。よく塩沢お召(おめし)とも呼ばれていますので、こちらを耳にする方も多いのではないでしょうか。
本塩沢の起源は17世紀中期に遡りますが、現在、国の重要無形文化財・ユネスコ世界文化遺産登録の「越後上布」の技術を応用し、主に新潟県 南魚沼郡 塩沢町で生産されています。
本塩沢は緯糸に強撚糸(きょうねんし・強く撚り(より)をかけた糸)を用いており、織りあがった反物を湯もみすると、撚りが戻って生地の上に独特のシボが現れます。これが本塩沢特有のシャリ感につながる訳です。
二百亀甲
今回ご紹介の本塩沢は200亀甲と表記されています。
亀甲は文字通り亀甲絣のことで、結城紬にも単位として使用されていますが、一反の幅の中に亀甲絣が直線でいくつ織り込まれているかという意味です。
数が多ければ多い程、絣が細かい=糸が細い=手間が掛かるということです。右の写真でお分かりでしょうが、下段の梅鉢文が織り込まれている方が200亀甲です、細かさは歴然ですね。
通常、絣で表す曲線や円というのは何かカクカクッとしてあまり綺麗ではありません。ですので市松や縞などのほうが重宝されます。
しかしこの梅鉢のそれぞれの円はきれいに曲線が織り込まれています。糸の細さによる絣の細かさが違和感なく円に見せていますね。
しなやかな生地にさっぱりとした柄取り、地色も抑えめで単衣(ひとえ)には申し分の無い着物です。
限られた期間にしか着られないものだからこそ、お洒落なものをまといたいと思いたくなるそんな素晴らしい逸品です。