2011年6月3日金曜日

本塩沢

                                 本塩沢
             


越後上布から応用された塩沢お召

本日の作品は本塩沢です。よく塩沢お召(おめし)とも呼ばれていますので、こちらを耳にする方も多いのではないでしょうか。

本塩沢の起源は17世紀中期に遡りますが、現在、国の重要無形文化財・ユネスコ世界文化遺産登録の「越後上布」の技術を応用し、主に新潟県 南魚沼郡 塩沢町で生産されています。

麻織物である越後上布の原材料、苧麻(ちょま)を絹に変えて織り上げたのが本塩沢と塩沢紬です。

本塩沢は緯糸に強撚糸(きょうねんし・強く撚り(より)をかけた糸)を用いており、織りあがった反物を湯もみすると、撚りが戻って生地の上に独特のシボが現れます。これが本塩沢特有のシャリ感につながる訳です。

二百亀甲

今回ご紹介の本塩沢は200亀甲と表記されています。
亀甲は文字通り亀甲絣のことで、結城紬にも単位として使用されていますが、一反の幅の中に亀甲絣が直線でいくつ織り込まれているかという意味です。
数が多ければ多い程、絣が細かい=糸が細い=手間が掛かるということです。右の写真でお分かりでしょうが、下段の梅鉢文が織り込まれている方が200亀甲です、細かさは歴然ですね。


通常、絣で表す曲線や円というのは何かカクカクッとしてあまり綺麗ではありません。ですので市松や縞などのほうが重宝されます。

しかしこの梅鉢のそれぞれの円はきれいに曲線が織り込まれています。糸の細さによる絣の細かさが違和感なく円に見せていますね。

しなやかな生地にさっぱりとした柄取り、地色も抑えめで単衣(ひとえ)には申し分の無い着物です。

限られた期間にしか着られないものだからこそ、お洒落なものをまといたいと思いたくなるそんな素晴らしい逸品です。



掲載商品9

              美しいキモノ 2009年冬号掲載 
        「本場結城紬地 訪問着」 十二支文様


品良く愛らしい十二支たち

今回の作品は重要無形文化財指定の本場結城紬に十二支文様が描かれている訪問着です。

織物の生地に図柄を描く場合、染料が浸透しにくい為に染めるというよりも塗るといった感じになります。
ですので写真のようにこれほどはっきりと描かれている十二支たちはかなりの手間ひまが掛かっていると思われます。
それぞれが玩具になっていて何とも可愛らしい顔つきですが、一つ一つ丁寧に描かれているので上品さも感じます。

そして地色に対して個々の配色が良く考えられているので眺めていても目が疲れず、何ともほっこりした雰囲気になりますね。

図案、染織、職人技の逸品です。


心地よさ、楽しさ満点

紬地の訪問着なので、帯合わせは金銀使いの”どフォーマル”では無く、つや消し系のしゃれっぽい袋帯を合わせます。訪問着なので名古屋帯ではない方が良いのですが、帯屋捨松のしゃれ綴などはグッドだと思います(柄にもよりますが)。

従来の訪問着よりも格は落ちるため結婚式には向きませんが、新年会等のお呼ばれや食事会、観劇など、着る心地よさと、見る楽しさをより引き立ててくれる素晴らしい逸品です。


掲載商品8

              美しいキモノ 2009年冬号掲載 
          「つづれ袋帯」 森口華弘(かこう) 制作



品格とやさしさを兼ね備えた逸品


今回の作品は重要無形文化財保持者(人間国宝)である、森口華弘 氏制作の綴(つづれ)袋帯です。
タイトルは絵の通り「梅文様」となっています。

略歴

1909年(明治42年)12月10日生。

1967年(昭和42年)、重要無形文化財「友禅」の保持者に認定。

2008年(平成20年) 2月20日没。



右奥の写真でお分かりのように、垂れ先からお太鼓部分まで槍梅の見事な描きっぷりです。ササッと描いている感じなのに存在感がある、さすが巨匠!と言いたくなる作品です(ちょっとのりが軽すぎですね(笑))。



さりげなく主張する


綴織の袋帯なので、紬織物では無く、やはりある程度の格が必要となってきます。右側の写真は上野真 氏 制作の色留袖です。柔らか味のある雰囲気の作品なのでのせてみました。

左側は坂口幸市 氏 制作の二枚小地白で染め上げた、加賀伝統小紋です。格としてはやや軽く、綴名古屋ぐらいがちょうどですが、配色の楽しさであえてあわせました。

留袖、訪問着、附け下げ、色無地など、華やかな場所や大事な行事などに相応しい素晴らしい逸品です。



掲載商品7

              きものサロン 2009年冬号掲載 
                          「小紋」 野口制作


しなやかな風合いとやさしい色あい

ほんわかとした雰囲気にうっすらと乱菊の花びらが唐草のように、全体に描かれています。


そして桜、菊、楓、梅、椿が楽しい色使いの花紋で散りばめられています。これだけ花の種類があると四季を全く感じさせないので薄物の季節以外はいつでも着用できますね。

帯も合わせやすい

地色、花紋供におとなしい色目なので、帯合わせはほとんど悩む必要はないですね。右上は勝山織物の市松文の名古屋帯です。右下は正月を意識してやや濃すぎですがあえて合わせてみました。

しなやかな生地ですので、単衣(ひとえ)に仕立てても大丈夫です。

掲載商品6

              美しいキモノ 2009年秋号掲載 
              「蝋堰出し(ろうせきだし) 小紋」

輪郭の無い柔らかな仕上がり

堰出しとは、模様の輪郭の外側に糊で堰の糸目を置き(外に飛び出さないよう防波堤のようなものを作る)、模様描き以外の部分は伏せ糊で全面を埋め、模様の内側に彩色をします。 このため輪郭線のない模様表現となるのです。

しっとりとしたちりめん生地のつや消しの雰囲気と、輪郭の無い柔らかな染め上がりが良い味わいを出し、色使いがどことなくメルヘンチックな感じがしてとても楽しい着物です。


着かたをいろいろ想像したくなる

右の写真は「美しいキモノ」に掲載されていた取り合わせです。メルヘン調を意識した可愛らしい感じがします。

帯合わせとしては、やはり黒地や紺地などの濃い地色の帯を合わせたほうが楽ですが、右下の写真のようにオフホワイトですが、ワンポイントの柄でやや大きめで、着物の雰囲気と色使いが似た感じだと逆にさっぱりとした合わせ方になりますね。
柄粋にもよりますが、地色は真っ白よりも生成系の方が合わせやすいです。

贅沢な提案ですがあえて長羽織というのも楽しい着かたです。いろいろなことが想像できる素敵な着物です。