2011年3月15日火曜日

名古屋帯

染め名古屋帯 



「立雛」

本日の作品は塩瀬地の染め名古屋帯です。制作は野口です。
図柄はご覧の通り雛人形です。現在普通に見られるお雛様は座り雛ですが、この図案は立雛(たちびな)と呼ばれているものです。


以前にもご説明致しましたが、立雛は文字通り、立ち姿の雛人形のことです。男雛は烏帽子(えぼうし)を被り、袴姿に小袖を左右に広げています。女雛は両袖を前に重ねて細帯姿ですが、それらの服装から室町風俗を写したものとされています。


古くは衣裳を全て紙で作っていたようで「紙雛(かみびな)」とも、「神雛」とも呼ばれました。様式的には最も古い雛人形と言われています。
また立ち位置ですが、この作品は、男雛が向かって左側に立つ現代式では無く、主に関西が中心の、向かって右側に立つ古式で描かれています。


金箔摺剥し

柄を良くみると金でまぶしたり、摺ったような感じになっていますが、金箔摺剥し(きんぱくすりはがし)という技法を用いています。

これはかなり濃い目に図柄を描き、その上から金箔を摺り合わせた後、剥すという手間の掛かる技法です。
これにより、昔は豪華絢爛だったものが、長い年月を経て「いぶし金」のごとく現在も名品としてあり続けるような雰囲気をこの技法により味あわせてくれています。


前腹の柄も、檜扇と貝合わせがお太鼓の柄を一層盛り上げてくれるようなさりげない、品のある図柄ですね。



今年も当店も恒例のお雛祭りを行います。それぞれの人形も可愛らしくて良いのですが、この帯のお顔もそれらに負けないぐらいなんとも優しいお顔で見ていてほっこりしてしまいますね。


日本の春と文化を楽しむ、そんなきっかけになる帯であれば良いなあと思いご紹介させていただきました。

京呉服せき HP http://www.kimono-seki.com

2011年3月6日日曜日

名古屋帯

                 きびそ 名古屋帯
 
            
「生皮芋」

本日の作品はきびそ八寸名古屋帯です。制作は白鷹織の佐藤新一氏です。

上段の写真にあるオリーブ色のような太い繊維が「きびそ」です。漢字で書くと「生皮芋」となりますが、間違いなく絹です。

繭から生糸を引き出す際、まず糸口を見つけますが、その時に繭の上層の糸にならない部分が取り除かれます。
それを集めて乾かしたものが「きびそ」と呼ばれていますが、それはもともと蚕が繭をつくる時、最初にはき出す糸なので、太さが均一でなかったり、よれたりするため「糸くず」として大半が廃棄処分されていたそうです。

キビソの生地は、シルクのなめらかな肌触りとは異なり、ごわごわと硬く張りがあるのですが、シルク同様、吸湿性・抗菌性があります。
それは、水溶性のたんぱく質セリシンが豊富に含まれている為なのですが、近年、高い保湿力・紫外線吸収力・そして抗酸化作用の働きがあることが注目され、薬品・化粧品・医療用品の素材として研究や試作が盛んにおこなわれています。

気軽に締めてお出かけを

合わせ方は、小紋や紬などのカジュアルが主体です。基本的には無地感覚なので着物合わせはかなり広いですね。

帯締め・帯揚げが多いに楽しめますが、合わせ方によってガラっと雰囲気が変わるでしょうね。

気軽に締めてお出かけするには抜群の帯です。味わい深い素敵な名古屋帯をどうぞご堪能下さい。


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