2010年2月9日火曜日

三才山紬

         みさやま紬
 

  
丹念に染め上げた優しい色合い



本日の作品はみさやま紬です。漢字では三才山紬と書きます。
現在、息子さんである、横山俊一郎氏が制作しておられますが、今回の作品は当時仕入れた年代からみて、父親である 故 横山英一氏と思われるのですが、示すものが無いので何とも言えません。
氏は信州、長野県、松本市で制作しています。
この作品の染料は山桜、渋木、藍、山漆が使用されていますが、全て工房の裏の山に生息する豊かな自然の恵みで染めたものであり、その糸を丹念に織り上げてなんとも優しい風合いを醸し出しています。

右の写真は生地のアップですが、落着いた地色に自然に調和するかのようにやさしい色目の縞が幾多も織り込まれています。

帯び合わせの嬉しい悩み


シックな地色ですが、多色の縞が個々に強く主張していない為、帯合わせもあまり考えずにすむと思います。
小物合わせも楽しみですね。
右の写真は高久尚子氏制作の塩瀬の染め帯です。
可愛らしい紙風船の柄ですね。
幾多ものやさしい縞と風船の色合いを意識して、あえて白地ですが重ねてみました。
生成りや桜色・ベージュ系はほんわかした感じで、グリーン系などにあわせるとやや個性的な雰囲気になりますね。

優しい色合いが、着たくなる楽しさと帯び合わせの嬉しい悩みを堪能させてくれるステキな紬です。

2010年1月18日月曜日

助左衛門

紫根(しこん)染め 絞り名古屋帯


  
紫根とは

本日の作品は紫根染めの絞り名古屋帯です。
制作は馬下助左衛門(まおろし すけざえもん)氏です。
氏は山形・米沢の豊かな自然の恵みで染めた糸を丹念に織り上げ、温もり溢れる着物や帯の製作を代々続けて、現在で16代目になります。
伝統を守りつつ、新たな技にも挑戦し、織だけでなく一珍(いっちん)染めや刷毛(はけ)染めなども製作しており、今回の作品もそのひとつです。

紫根とはムラサキという植物の一種の根の部分であり、(多年草、初夏から夏にかけて白い花を咲かせます)生薬のひとつにもなっていますが、万葉集にもその名が出るほど歴史は古く、奈良時代から江戸時代末期まで栽培が行われ、江戸時代には染められた絹を鉢巻にし、病気平癒の為、頭にまく風習が生まれたそうです。

元来栽培自体が難しく、ムラサキの自生地が激減したことにより、現在多くの紫染めは化学染料によるものとなっています。

手間ひまかけた色合いと絞り

紫根染めといえば、「南部紫根染め・茜染め」がよくきかれますね。それらの作品はいずれご紹介します。
絞りの部分はよく見ると、きれいな麻の葉文様に絞られています。
あえて全部絞らずに、じっくり染め上げた紫根色を堪能させるかのように残した憎い作りかたです。

藤色、灰色、白色系などにあわせるとさっぱりした雰囲気になりますね。
良いセンスと手間ひまがかかったステキな帯です。

2010年1月10日日曜日

掲載商品3

美しいキモノ 2008年冬号掲載 
「宝尽くし文様 名古屋帯」


江戸小紋に色無地に

塩瀬の生地になんともすっきりとした宝尽くしの刺繍が入った可愛い帯でしょう!
縫い糸の配色も良いのですが、やはり図案勝ちですね。鶴と海老がものすごく可愛いです。
上段の写真は縞の小紋を、右の写真は全くわかりませんが、市松に型どられた、行儀通しの江戸小紋にあわせてみました。
「美しいキモノ」では、竺仙の江戸小紋にあわせていました。

お祝いの席に最適

基本的には江戸小紋・色無地・ややフォーマルな柄付けの小紋などが最適です。
地色が白地ということもあって色あわせも楽だと思います。右下の写真はたつむら製作のクリーム地の紋意匠・色無地です。
きものには唐草を主体に龍とたつむらのロゴマークがところどころに、八掛にはたつむらのロゴマークのみが織り込まれています。

掲載商品2

美しいキモノ 2008年冬号掲載 
「雪持ち松文様 塩瀬名古屋帯」


染め帯らしさが出ている上品な帯

淡い緑がかった灰色のようななんともいえない地色に凛とした雪持ち松が描かれている素敵な帯です。
前腹の柄は幹の部分が繋がって描かれていて、ちょっと面白いです。



縮緬の鮫小紋に

右下の写真では、濃緑と黄土を組み合わせた縮緬地の鮫小紋にあわせてみました。
織物もいいですが、こういった江戸小紋に縫紋を入れて、お茶席などに着て行かれるのもお洒落だと思います。

掲載商品1

美しいキモノ 2008年秋号掲載 
「織名古屋帯」見留敦子制作


手織りのぬくもりとやさしさ


上段のアップの写真のにあるように、葉の絣模様と紗織りがミックスされたとても楽しい帯です。この帯のタイトルは「卯月」と付けられているので、春のコーディネイトとしては申し分の無い帯だと思います。右横の写真はさわやかな感じを意識して、薄い黄緑がかった小千谷紬にあわせてみました。




生地のしなやかさと軽さ

さすがに手間隙をかけ、こだわって織られた作品だけあって生地のしなやかさとはりが見事に同居している素晴らしい帯です。右下の写真は新田英行氏の紅花染め紬にあわせてみました。同系色なので、濃い色目にのせても違和感がないです。「美しいキモノ」では黒地の紬にあわせていました。

2010年1月5日火曜日

塩瀬 染め帯

塩瀬地 染め名古屋帯


  
幻想的な雰囲気


本日の作品は塩瀬地の染め名古屋帯です。

制作は成田 華仙(なりた かせん)氏です。氏は東京友禅の第一人者である熊谷 好博子(くまがい こうはくし 大正6~昭和60年)のもとで学び、熊谷氏の世界を見事に継承しています。

今回の作品も祖は熊谷氏でありますが、杢目の摺り、ぼかし具合が妖艶でもあり、幻想的でもあり、なんとも言えない世界観が醸し出されています。






写真では分かりにくいのですが、地色も真っ黒ではなく、ほんのり紺がかっており、またその部分も杢目が摺り込まれています。左側の写真は前腹の部分です。

帯締めは柄ものでは無く、無地のすっきりとした感じのもので締めたほうが良いですね。


凛とさせる帯



着物合わせはどちらかというとやはりモノトーンの感じがすっきりとしますが、あえて同色系で合わせて帯締めを利き色にもっていくというのも面白い合わせ方になると思います。

右の写真は山形で染織をしている現在十六代目の馬下 助左衛門(まおろし すけざえもん)氏制作の紬着尺です。絹の光沢と矢車草の色目が綺麗に織り成されて杢目の雰囲気とマッチしています。



着物の格好良さと女っぷり度(笑)をグッと盛り上げてくれる素敵な帯です。

2009年12月11日金曜日

袋帯

龍村織物制作 袋帯 
「甲比丹孔雀文」(かぴたん くじゃくもん)
 
カピタン(甲比丹、甲必丹、加比旦)



本日の作品は袋帯です。制作は龍村平蔵で有名な龍村織物です。
タイトルは「甲比丹孔雀文」となっています。

「甲比丹」とは江戸時代、東インド会社が日本に置いた商館の最高責任者「商館長」のことを言いますが、ポルトガル語で「仲間の長」という意味があり、南蛮貿易の際、船長のことをさしていました(英語のキャプテンと同語源)。
その船長がもたらした広幅の縞織物を「甲比丹縞」と呼ばれ、今日、名物裂のひとつに名を連ねています。



右側の写真は帯の裏になりますが(本袋なので、共生地です)、裏側にも手を抜かず、シンプルな甲比丹縞が織り込まれています。


左側の写真は孔雀部分のアップですが、分かりますでしょうか?
青色の部分が羽根で、ちょうど後ろを振り返っているような感じになっています。(アップよりも上段の写真の方が分かりやすいかも(笑))


ワンランク上の楽しみ方

右の写真は同じく前腹の部分ですが、たっぷりと織られています。
やはり赤の縞が効いていますね、有ると無いとでガラっと雰囲気が変わります。

(たとえ方がおかしいですが)、このもっちゃりとした独特の織り加減と味わい深い孔雀と縞の取り合わせ。
そしてこの地色と柄の配色が何とも楽しい気持ちにさせてくれます。


洒落の袋帯としては申し分の無い帯です。結城や大島、黄八丈などの工芸品から、こだわりの染め着尺など、ワンランク上の取り合わせを楽しみたい、そんな気持ちにさせてくれる素敵な袋帯です。