2011年9月29日木曜日

袋帯

                              袋 帯 
          

刺繍がしっかり・たっぷりと

本日の作品は刺繍の袋帯です。

黒箔の台に唐草と宝尽くしの刺繍がなんとも綺麗に施されていますね。刺繍自体もいろいろな縫い方をしているので、よくよく見てみると「へぇ~」とか「ほぉ~」の連続で楽しくなりますよ。

 
とくに唐草の部分はほどけにくくする為と、恐らく立体感をだす為に金駒の両側に黒糸で挟むように全て縫われているのが「おおぉ~!」と言いたくなりますね (雄たけびばかりですみません 笑)。



秋冬・新春に

右の写真は前腹の部分です。こちらもしっかり・たっぷり刺繍が施されています。
附下や訪問着などのフォーマルに合わせますので、帯締め・帯揚も華やかなものから渋めまで楽しみがいがありますね。

お召しになるお着物をワンランク上げてくれる素敵な袋帯です。

秋冬、新春等のお呼ばれごとに抜群に活躍してくれるでしょうね。

2011年9月19日月曜日

栃尾紬

                栃尾紬 (とちお つむぎ)
            

栃尾郷

本日の作品は栃尾紬です。
栃尾紬は、現在の新潟県長岡市の栃尾で生産されていることからこの名がつけられています。


栃尾地方には栃尾郷と呼ばれる古くからの織物の産地があり、農家の副業として、殆ど全域にわたって生産されていました。この栃尾織物が、歴史的にまた、社会的に意義をもつようになったのは、江戸中期に先染の縞織物が生産されてからであるといわれています。


この紬は製糸には出来ない玉繭(たままゆ)を真綿にして、それを紡いで織られたものですが、長年に渡って改良を繰り返した結果、糸織りを主としながら玉糸や節糸を用いるなどの工夫がこらされました。


一見すると、綿織物のように見えますが、絹特有の光沢があり、しぶく目立たないために、凝った趣向とすぐれた品質が評判となり、主として江戸の町人の伊達者間で賞用されたようです。(長岡市資料より)



秋の「ひとえ」にも

現在よく見られる栃尾紬は玉糸で織られたツルっとした生地ですが、今回紹介の作品は、最近ではあまり見られない、座繰りで織られた生紬のようにざっくりとしていますが、風合いはしなやかで張りもあるためにひとえでも十分対応できます。

地色と絣の配色がなかなか面白いですね。帯び合わせはやはり藍染め系がしっくりときやすいでしょうかね。


現在も生産数はわずからしく、(今回の作品はなお一層ですが)あまり見ることが少ない織物の一つになってきました。見た目のざっくり感とはちがうやさしい風合いの織物です。秋ひとえにもぴったりなお着物だと思います。

2011年9月18日日曜日

芭蕉布

           喜如嘉の芭蕉布 (きじょかのばしょうふ)  
          

糸芭蕉

本日の作品は喜如嘉の芭蕉布の八寸名古屋帯です。
制作は、平良敏子氏です。

昭和49年、重要無形文化財に認定された「喜如嘉の芭蕉布」は、沖縄本島北部の大宜味村喜如嘉の「喜如嘉の芭蕉布保存会」に於いて、人間国宝 平良敏子さん(平成12年認定)を中心に製作されいる織物です。

芭蕉布は文字通り、芭蕉の木から取った繊維で作る織物です。
芭蕉には3種類あり、深紅の花をつける「花芭蕉」、美味の「実芭蕉」、繊維の取れる「糸芭蕉」があります。

この糸芭蕉から作られる織物が古来沖縄の人々に親しまれてきた芭蕉布なのです。

着物1反分の糸を取るには約200本もの芭蕉の木が必要とされます。

良質の糸は良い畑からと言われるだけに、糸芭蕉の栽培は大変重要な最初の段階なのです。

肥料を入れたり、葉や芯を切り落とすといった作業を経て、刈り取った後は皮を剥ぎ、大鍋で煮込み、何工程もある手間のかかる作業を経てようやく糸が出来上がります。

織りよりも、その前準備のほうが当然ずっと長いのですが、平良さん曰く、「織りは全体の100分の1」だそうです。


そうして織り上がった芭蕉布は、そのひんやりとした肌ざわりと風通しの良さ、何とも言えない味わい深さを感じさせる素敵な衣として、長きに渡り愛されているのです。



八寸帯と九寸帯

現在よく見られる芭蕉布の帯は九寸名古屋帯が主流で、お太鼓に「麦の穂」や「ゼニダマー」といった琉球絣が織り込まれていますが、
今回の作品は芯がいらない、かがるだけの八寸帯ゆえ生地が厚めに織ってある為に絣ではなく花織が施されています。


厚めに織られているとは言え、見た目以上に柔らかい、しかししっかりと腰のある風合いは前準備にしっかりと費やした良質な糸が物語っているのでしょう。

良質な糸による最高な締め心地と何ともたまらない素敵な配色、前回の科布同様、通気性が良く、軽く、水濡れにも強く、素朴なとても味わい深い織物です。



この作品は最近制作されたものではありません。綺麗に丁寧にまとめられたものではない、勢いと荒々しさの中に個性と想いがキラリと光るそんなワクワクしてしまう作品です。

重要無形文化財に指定された織物であることが伊達ではないことが、見て触れて締めたときに感動として存分に味わえる帯でしょうね。

2011年8月16日火曜日

科布

                        科布(しなふ)            



古代布

本日の作品は科布の名古屋帯です。

科布は、東北地方の山間に自生する科の木の繊維で織られる古代織物です。


手積みの科の皮を竹棒、石などで皮をしごき、糖漬けにして軒先に吊るします。秋になったら灰汁で煮た後に薄く裂き糸状にし、農作業ができない冬の時期に丹念に織り上げていきます。

手間の掛かる作業ゆえに一部の集落でしか生産されなくなってしまいましたが、それでも現在も当時と変わらない工程を経て織られ続けています。

自分だけの帯

風合いがざっくりとしていてとても丈夫なこともあり、昔は野良着や穀物を入れる袋などの素材としても用いられていました。

通気性が良く、軽く、水濡れにも強く、素朴なとても味わい深い織物です。

使い始めの頃は、中々「きかん坊」なところが存分に発揮されてしまいますが、使い続けていくほどに柔らかくなり、そして自分の締める丁度良い形や具合になっていきます。

 
それこそがお金では買えない、新品では味わえない自分だけの帯になるということです。


洒落物の楽しさを倍増させる織物です。国産物は段々と生産数が少なくなってきているのが現状ですので、購入チャンスがあればご一考下さい。
 

浴衣

            雪花絞(せっかしぼり) 浴衣  
          

有松絞りの代表格

本日の作品は雪花絞です。雪華絞と表記している場合もあります。
板締めにより絞り染められた文様が雪の結晶のように見えるところから名づけられました。本当に吸い込まれそうなくらい綺麗ですね。





生地は通常の綿コーマ地と違い、綿70%・麻30%の紅梅地ですのでシャリ感がありとても気持良いです。
コーマ地で絞ったものもありますが、「金麦」のCMで着用されたものは、この生地で絞られた浴衣です。

楽しさ100倍

この写真も同じく雪花絞です。多色使いで手間が掛かっていますが物凄く可愛いですね。今回の「美しいキモノ」にもこれより若干、柄が大きい浴衣が掲載されています。

こちらの写真は麻の半幅帯を合わせてみました。黄色い帯でも可愛いですよね。ビアガーデンや夏祭り、花火大会など毎回見せたくなる浴衣です。



自社のプライド

当店は京都に行き、産地に行き、それぞれ吟味して吟味して仕入れた商品一つ一つにこれらの写真のように自社のシールをつけています。

 

それは自分で仕入れた、作って頂いた「あかし」であるとともに当店の「自信」と「責任」を明記したいからです。

これからも、当社が仕入れた・作って頂いた素敵な作品たちを自信を持ってご紹介させていただきますのでよろしくお付き合い下さい。

2011年6月3日金曜日

本塩沢

                                 本塩沢
             


越後上布から応用された塩沢お召

本日の作品は本塩沢です。よく塩沢お召(おめし)とも呼ばれていますので、こちらを耳にする方も多いのではないでしょうか。

本塩沢の起源は17世紀中期に遡りますが、現在、国の重要無形文化財・ユネスコ世界文化遺産登録の「越後上布」の技術を応用し、主に新潟県 南魚沼郡 塩沢町で生産されています。

麻織物である越後上布の原材料、苧麻(ちょま)を絹に変えて織り上げたのが本塩沢と塩沢紬です。

本塩沢は緯糸に強撚糸(きょうねんし・強く撚り(より)をかけた糸)を用いており、織りあがった反物を湯もみすると、撚りが戻って生地の上に独特のシボが現れます。これが本塩沢特有のシャリ感につながる訳です。

二百亀甲

今回ご紹介の本塩沢は200亀甲と表記されています。
亀甲は文字通り亀甲絣のことで、結城紬にも単位として使用されていますが、一反の幅の中に亀甲絣が直線でいくつ織り込まれているかという意味です。
数が多ければ多い程、絣が細かい=糸が細い=手間が掛かるということです。右の写真でお分かりでしょうが、下段の梅鉢文が織り込まれている方が200亀甲です、細かさは歴然ですね。


通常、絣で表す曲線や円というのは何かカクカクッとしてあまり綺麗ではありません。ですので市松や縞などのほうが重宝されます。

しかしこの梅鉢のそれぞれの円はきれいに曲線が織り込まれています。糸の細さによる絣の細かさが違和感なく円に見せていますね。

しなやかな生地にさっぱりとした柄取り、地色も抑えめで単衣(ひとえ)には申し分の無い着物です。

限られた期間にしか着られないものだからこそ、お洒落なものをまといたいと思いたくなるそんな素晴らしい逸品です。



掲載商品9

              美しいキモノ 2009年冬号掲載 
        「本場結城紬地 訪問着」 十二支文様


品良く愛らしい十二支たち

今回の作品は重要無形文化財指定の本場結城紬に十二支文様が描かれている訪問着です。

織物の生地に図柄を描く場合、染料が浸透しにくい為に染めるというよりも塗るといった感じになります。
ですので写真のようにこれほどはっきりと描かれている十二支たちはかなりの手間ひまが掛かっていると思われます。
それぞれが玩具になっていて何とも可愛らしい顔つきですが、一つ一つ丁寧に描かれているので上品さも感じます。

そして地色に対して個々の配色が良く考えられているので眺めていても目が疲れず、何ともほっこりした雰囲気になりますね。

図案、染織、職人技の逸品です。


心地よさ、楽しさ満点

紬地の訪問着なので、帯合わせは金銀使いの”どフォーマル”では無く、つや消し系のしゃれっぽい袋帯を合わせます。訪問着なので名古屋帯ではない方が良いのですが、帯屋捨松のしゃれ綴などはグッドだと思います(柄にもよりますが)。

従来の訪問着よりも格は落ちるため結婚式には向きませんが、新年会等のお呼ばれや食事会、観劇など、着る心地よさと、見る楽しさをより引き立ててくれる素晴らしい逸品です。