2009年11月19日木曜日

小紋

紬地・加工着尺 「呼継」(よびつぎ)
 
くっついても離れない

本日の作品は加工着尺です。難しい言い方ですが要は紬地に染めでは無い加工を施した小紋着尺です。
タイトルは「呼継」となっていますが、呼継(よびつぎ)とは、陶器に使われる技法で、窯趾付近に散らばっている陶片を拾い集め、異なる器の破片を工夫しながら接着して、茶碗などひとつの作品に仕上げたものを呼びます。
「くっついても離れない」という意味で結婚式の縁起物に使われることもあるようです。写真でみた感じは生地に描かれたものを縁取りしたようにみえますが、「呼継」の名の通り、別の生地を接着してから縁を縫っています。
裏から見るとアップリケの感じに似ていますね。
紬の生地は「特蚕手紡紬」という小千谷の紬を後染めしたものです。地色と継いだ生地の雰囲気がマッチしていますね。

呼継の名古屋帯

右の写真は同じく「呼継」の名古屋帯です。地色と加工を縦から横にするだけで、ガラッと雰囲気が変わりますね。
継がれている生地もいろいろあってどれも素敵な柄です。
帯の場合は、柄の配置が難しいですが、お太鼓と前腹に入れるだけで良いのです。しかし上記の小紋は万遍なく入れなくてはいけないのでかなり手間が掛かります。
秋冬に向かって楽しんでいただける素敵な着物と帯です。

2009年9月25日金曜日

袋帯

袋帯


 
色鮮やかな配色と織の緻密さ


本日の作品は袋帯です。

タイトルは「乾山色絵菊文」となっていますので、五島美術館所有の「乾山色絵菊文向付」よりオマージュされたのではないかと思われます。


色鮮やかな配色と構図の大胆さ、白地であってもほとんど白場がありませんね。
花の輪郭の濃淡さや葉の色も何色か使い分けていて、とても注意深く丁寧に織られており、原画に対する敬意を感じ取れます。


右奥の写真は垂れにあたる部分です。お太鼓の菊はピンクですが、黄色の菊や花の裏側の茎の付け根部分など色々な菊を見ることができて楽しく可愛い帯です。

袿錦」(うちきにしき)

垂れ先の部分に「日本の絹」・「日本の繭」のマークと「袿錦」(うちきにしき)の文字が織り込まれています。


袿錦とは、この帯のメーカーが名づけた名称ですが、平安時代から公家の女性の装束に小袿(こうちき)という貴族女子が着る(掛とも呼ばれる)準正装の上着ものがあり、用途・格式は時代によって様々ですが、何れも小袿は上品な色をもち、素晴らしい有職文様が織り込まれてきたようです。


そこでこのような上品さを、袋帯の生地、或いは全体に表現出来ないものかと思い、名付けたそうです。

夏物ではありませんが、生地は非常に薄く、やわらかく、紗や羅のように透けています。
そこに正倉院文様や琳派文様を織り、質感の差からくる「織の楽しさ」を表現しています。
非常に薄い生地にシワを寄せずに文様を織り込む、大変難しい織りです。



緻密さ、大胆さ、軽さを兼ね備えた素敵な帯です。
どんな着物にあわせよう?小物は?とあれこれ考えたくなる楽しい帯ですね。

2009年9月17日木曜日

助左衛門

名古屋帯

 
草木染めのやさしい色合い

本日の作品は名古屋帯です。制作は山形県米沢市在住の馬下助左衛門氏です。
藍と柿渋で染めていますので、柿渋染めによるザックリ感はなんともいい風合いです。やや薄手で透けた感じに織っていますが基本的には夏物ではないので長期間締めることができます。
柄は団扇文様のような感じがしますね。
地色は柿渋の上から藍を重ねているので、なにか藍っぽくない良い雰囲気がでています。

馴染むよろこび

右の写真はお太鼓の感じにしてみましたが、これは九寸帯なので実際はもう少し幅が短くなり、帯芯を入れて仕立てます。
以前夏帯で触れたのですが、今回も白芯ではなく、やや紺系の色芯で仕立てると落着いた感じになりますので、お薦めしたいと思います。

締めなれていくうちに、やがて藍が枯れ、地色・風合いが馴染んだものになったときにはお金では買うことの出来ないもっともっと素敵な帯になっているでしょうね。

2009年9月10日木曜日

名古屋帯

                  名古屋帯


 
きっとチラ見される面白い帯


本日の作品はパッチワークの名古屋帯です。
帯地は野蚕糸系を使用したと思われるざっくりとした生地です。

斜めからのアップの写真の通り、きれいにパッチワークが施されていますね。 このきれいな仕事に耐えうるように生地の打ち込みもしっかりとしています。


この生地の地色に対して矢羽根の配色はややこってりとしていますが、古布のように見せるのであればこれぐらい強めのほうが個性を感じてかえって可愛らしく見えますね。

締めるたのしみ

右の写真はお腹の柄の部分です。お太鼓がこってりに対して前腹は物凄くあっさりと、しかもパッチワークではなく崩した七宝文様を刺繍で表しています。


このアンバランス感は人によって賛否かもしれませんし、また人によっては帯止めを使用するというのもあるでしょう。


どちらにしても結ぶ楽しみ・コーディネイトの楽しみを感じる可愛い帯ですね。
すれ違いざまに 「んっ?」 と振り返られるであろう楽しい作品です(笑)。

2009年8月16日日曜日

夏小紋

夏小紋

 
爽やかさと楽しさ


本日の作品は夏の小紋です。地色は真っ白では無く、生成地なのでやさしい雰囲気に感じますが、なんといってもこの魚です。とても可愛らしい目をしています(笑)。生地のしなやかさに地色の爽やかさ、そして柄の楽しさと配色のサッパリ感、蒸し暑くなっている日々を楽しくさせる可愛い夏小紋です。


着るたのしみ


生地は粋紗の変り織です。影に映し出されている透け感がなんともいい雰囲気ですね。前回「大人のめるへん」として紗の名古屋帯をご紹介いたしましたが、「洒落やムードを楽しむ装い」というきものを着るひとつの楽しみ方をこれからもぼちぼちですがご紹介・ご提案させていただきますのでどうぞご笑覧ください。

京呉服せき のホームページはこちら http://www.kimono-seki.blogspot.com/

2009年7月27日月曜日

イベント

和の雑貨市
2009/7/18(土)~7/27(月) 

ありがとうございました
さっぽろ地下街 オーロラタウン コミュニケーションスペース
札幌市中央区大通西2丁目(地下街小鳥の広場前)
*丸井今井 地下街入口付近・きたキッチン向い

オーロラタウンでこの雑貨市をやり始めてから、はや7年目を迎えました。毎年たくさんの方々が来て下さり、感謝いたしております。今年も面白い雑貨品を多数展示致しますのでどうぞお楽しみに。


今年の当店の出品品目
・下駄・浴衣(男女)・浴衣帯・巾着・風呂敷・アタバッグ・日本ハムファイターズ半天(北海道の呉服店限定商品)
・子供じんべい・子供げた・子供ゆかた・日傘・帽子・ショール・はぎれ
・暖簾・団扇・扇子・藍染物・古袱紗など
お問合せ先は
京呉服 せき 011-761-6816

2009年7月25日土曜日

夏名古屋帯

  
夏名古屋帯
                   
 
紗(しゃ)による清涼感と軽量さ

本日の作品は夏名古屋帯です。
地は紗になっています。袋帯ですと裏地があるため重なって見えるのですが、名古屋帯ですので、裏地がありません。
よって上段の写真でお分かりですが、透けまくっています(笑)。
しかしこの透け感が夏の帯らしく涼やかに見え、そして軽さを感じますね。
タイトルが「森の銀河」となっています。その名のとおり、木々の中からふと夜空を見上げると銀河がありそして流れ星が・・・。何とも夢が膨らむ素敵な帯ですね。
森林部分は当然として、銀河の部分もそれと分かるように丁寧に織られています。デザインもよくできていますが、配色も地色が黒では無く、あえて墨色にしてあるところがナイスです。

白芯?黒芯?

左は白生地を、右は黒地の八掛の上にそれぞれ乗せてみました。
ただ乗せているだけなので、写真では何か「もやっと」した雰囲気に感じますが、仕立てるともっと密着しますのでその心配はなくなります。
白地だと影の感じがし、黒地だと自然な感じに見えます。好みにもよると思いますが、夜空のイメージなので、私は黒地の方をお薦めしたいです。やや濃い目のグレー系でも面白いと思います。

大人のめるへん

右の写真は前腹部分です。三日月と流れ星がすくいで織られています。
通常こういった類の帯はたんなる「うけ」狙いで製作され、仕事も単調な為にすぐ飽きられる傾向にありますが、この機屋さんの帯はどれも柄行だけでなく、織はすくい、金部分は本作品もそうですが本金を使うなど「うけ」狙いだけではとうてい済まない仕事内容になっています。
そのため価格も「くすっ」と笑える状態ではありませんが(笑)、洒落やムードを楽しむ、
大人のめるへん」としての装い、きものは何に併せよう?と考えただけでも楽しくなりますね。
夏が来れば締めたくなる、そんな気持ちにさせてくれる逸品です。